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第31話 別れた人の匂いが、まだ部屋に残っている

last update Tanggal publikasi: 2026-09-22 15:30:32

第31話 別れた人の匂いが、まだ部屋に残っている

 フェチ研に、初めて外部の学生から相談が来た。

 それを聞いた時、俺は真っ先に神崎先輩の顔を見た。

「先輩」

「何?」

「とうとう何か変な掲示出しました?」

「人聞き悪いなあ」

「だって今まで身内だけで変な話してたサークルですよ」

「ちゃんと研究会って書いてる」

「名前がまず怪しいんです」

 神崎先輩は笑いながら、机の上に一枚の紙を置いた。

 大学内のサークル紹介用に作った小さな案内だった。

『感覚文化研究会 好きな声、匂い、手、仕草、文字、音、食べ方など、人には少し言いづらい「好き」をゆるく研究しています。匿名相談可』

「……こんなの出してたんですか」

「一週間前から」

「聞いてない」

「掲示板に貼っていいって顧問から許可取ったよ」

「そこは仕事早いな」

 陽菜が横から紙を覗き込む。

「でも、ちょっといいかも」

「お前まで」

「だって『好き』って人に言いにくいことあるじゃん」

「まあ」

「私も最初、汗とか匂いの話なんて絶対したくなかったし」

「それはそうだな」

「でも今は、ここならちょっと言える」

 そう言って陽菜は自然に笑った。

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